はじめに|観葉植物のさし木とは
観葉植物のさし木(挿し木)は、枝や茎の一部を切り取って発根させ、新しい株をつくる増やし方です。
この増やし方は比較的簡単で、正しい時期と方法を守れば初心者でも高い成功率で増やせます。
本記事では、実際に成功率を上げるための手順を詳しく解説します。
1. さし木のメリットと基本原理
観葉植物のさし木には、次のようなメリットがあります。
- 親株と同じ性質を持つ株を増やせる
- 種まきよりも成長が早く、形が整いやすい
- 枝が伸びすぎた株の「切り戻し」ついでに増やせる
原理としては、植物の茎や節の部分に存在する「未分化細胞」が刺激を受けて発根する仕組みです。
水分管理と酸素供給のバランスを取ることで、根が出やすくなります。
2. 必要なアイテム
- ハサミ(観葉植物を切るときに使います)
- 手袋(安全のため)
- 土(清潔なもの。詳しくは5章で解説します)
- 鉢(土を入れるため。プラ鉢等手軽に用意できるもので大丈夫です)
- ルートン(発根促進剤。あると成功率がアップします。)
3. さし木の適期と環境条件
観葉植物の多くは春から初夏(4〜6月)、または秋(9〜10月)が適期です。
生育が活発な時期で、根を出す力が強くなります。
避けたほうがよい季節:
- 真夏:高温多湿で腐りやすい
- 冬:低温で発根が止まりやすい
温度は20〜25℃前後、湿度はやや高め(60〜70%)を維持しましょう。
屋外の場合は直射日光を避け、明るい日陰で管理するのがコツです。
4. 挿し穂の選び方と下処理
良い挿し穂の条件
- 健康で病気や虫害のないもの
- 新しく、しなやかで太すぎない茎
- 葉の節が2〜3つ含まれる長さ(下の画像の真ん中あたりのデッパリのような気根を含めてカットしいてあげるといいです)

切り方のポイント
- 清潔なハサミで、節の少し下を斜めにカットする
- 下の方の葉を2〜3枚取り除く
- 葉が大きいもの(モンステラやフィカス、大型のポトスなど)はさし穂の手順2でカットしていない葉を半分に切る(余計な蒸散を防ぐため)
- 切り口を1時間程度水に浸けて吸水させる(「水揚げ」)
- その後、風通しのよい日陰で半日〜1日乾かす(トサミズキやフィカス等の枝物はやったほうがいいですが、ポトスなど乾燥に強くないものの場合この手順はやらなくて大丈夫です)
切り口を乾かすのは、菌の侵入や腐敗を防ぐためです。

5. 用土と鉢の準備
観葉植物のさし木には、清潔で通気性のよい用土が最適です。
おすすめ配合(初心者向け)
- 赤玉土(小粒)4
- パーライト3
- バーミキュライト3
または市販の「挿し木用土」「さし芽種まき用土」をそのまま使っても問題ありません。
鉢は底穴のあるスリット鉢やプラポットを使い、事前に霧吹きで軽く湿らせておきます。
6. さし木の手順

- 鉢の中央に仮穴をあける(割りばしなどで)
- ルートン(発根促進剤)がある場合は、切り口につけておく
- 挿し穂を1〜2節ほど埋める深さで挿す(気根がある場合は、気根を埋めるようにする)
- 軽く土を押さえ、ぐらつかないよう固定する
- 挿し木全体に霧吹きで水をかける
- 風通しのよい明るい日陰で管理する
この時期は強い日差し・冷暖房の風に注意。
特に直射日光下では葉焼けを起こしやすいので避けましょう。
7. 発根までの管理と注意点
発根まではおよそ2〜4週間。
この間にやるべきことは以下の通りです。
- 乾燥防止:表面が乾いたら霧吹きで湿らせる
- 過湿防止:水をやりすぎると根腐れする
- 湿度維持:ビニール袋をかぶせると湿度が安定(蒸れに注意)
- 発根チェック:軽く引いて抵抗があれば根が出ているサイン
発根促進剤(オキシベロン液剤、メネデールなど)を使うと成功率が上がります。
ただし、多湿状態で使うと逆効果になるため、控えめに。
8. 発根後の管理と植え替え

根が出て新芽が伸びてきたら、挿し木の成功です。
そのまま数週間育て、根が鉢底に見えるようになったら植え替えのタイミング。
植え替え時のポイント:
- 通常の観葉植物用土に切り替える(肥料入りでOK)
- 根を崩さず丁寧に扱う
- 水やりは「乾いてからたっぷり」
- 半日陰で2週間ほど養生してから通常管理へ
9. 失敗しやすい原因と対策
| 原因 | よくある症状 | 対策 |
|---|---|---|
| 水のやりすぎ | 挿し穂が黒ずむ・腐る | 表面が乾いてから霧吹きで湿らす程度に |
| 乾燥しすぎ | 葉がしおれる・縮む | 湿度を保ち、風通しを確保 |
| 直射日光 | 葉が白く焼ける | 明るい日陰で管理 |
| 切り口の処理不足 | 根が出ない・腐る | 切り口をよく乾かし、清潔な用土を使う |
10. よく増やせる観葉植物の例
| 種類 | 方法 | ポイント |
|---|---|---|
| ポトス | さし木 | 水挿しでも可。節の部分を必ず含める |
| モンステラ | さし木、とり木 | 気根付きの節を使うと成功率が高い |
| アイビー(ヘデラ) | さし木 | 春・秋が最適。根が出たら早めに植え替え |
| シェフレラ(カポック) | さし木、とり木 | 太めの枝でも可。乾燥注意 |
| フィカス(ベンジャミンなど) | さし木、とり木 | 切り口の白い樹液は洗い流す |
| ホヤ | さし木、葉さし | 茎のぶつぶつしたところを含めると成功率が上がる |
初心者はまずポトスやアイビーなど、発根しやすい種類から挑戦しましょう。
10. まとめ|観葉植物のさし木は「湿度と清潔」がカギ
観葉植物のさし木は、難しそうに見えて実は基本を守るだけで成功率がぐっと上がります。
ポイントをおさらいすると
- 適期は春か秋
- 健康な枝を選び、切り口を乾かす
- 水はけのよい清潔な用土を使う
- 明るい日陰で高湿度を保つ
失敗しても、原因をひとつずつ見直せば次は必ずうまくいきます。
ぜひ、身近なポトスやアイビーから「増やす楽しさ」を体験してみてください。